心が折れてもすぐに立ち直る「レジリエンス」の磨き方
職場で若手や中堅の皆さんが新しい挑戦に取り組んでいる姿を見ると、私もパワーをもらいます。
ただ、新しい挑戦や成長にはストレスがセットでついて来ることがあります。なぜなら、新しいことをすると、壁にぶつかったり、大きな失敗を経験したりして、辛くなることがあるからです。
■マネージャーとして思うこと
私も管理職として、メンバーがストレスを溜め込まず、活き活きと働ける環境を整えることが仕事ですが、同時に、メンバー自身が「逆境から立ち直る力」を持つことが、前向きなビジネスライフを歩んで行く上で非常に重要だと感じています。

このページでは、最近ビジネス界でも注目されている「レジリエンス(精神的回復力)」について、産業医の先生方の知見も交えながら、書いています。
❶レジリエンスは「耐える力」ではなく「戻る力」

レジリエンスという言葉、まだあまり聞き慣れないかもしれませんね。
これは「困難や脅威に直面しても、うまく適応し、回復する能力」のことを指します。
元々は第二次世界大戦で孤児になった子どもたちの追跡調査から注目された概念です。
レジリエンスの根底にある考え方は、物理学で言うところの「復元力」や「弾力」のイメージです。
ここでよく混同されがちなのが、「ストレス耐性」との違いです。
- ストレス耐性:精神的・肉体的にストレスに「耐えられる程度」、つまり「曲がりにくさ」です。
- レジリエンス:仮に曲がってしまったとしても「戻る、戻りやすさ」です。
極端な話、ストレス耐性が非常に強くてもレジリエンスがない人は、ストレスを内部に溜め込んでいる可能性があります。
一方で、レジリエンスが高ければ、一時的に落ち込んでも、切り替えが早く、すぐに復活できるわけです。
我々ビジネスパーソンにとって、ストレスを受けないことは不可能に近いです。だからこそ、ストレスを溜め込むのではなく、受けた後にいかに早く立ち直るか、この回復力(レジリエンス)を磨くことが、キャリアを継続し、成長し続けるための鍵になります。
❷立ち直る力の土台となる3つの要素
「レジリエンスは生まれつき決まっているのでは?」と思われるかもしれませんが、ご安心ください。その構成要素の多くは、後天的に獲得することが可能だとされています。
精神的な回復力、すなわちレジリエンスが高い人が持っている要素として、主に3つが挙げられています。
1. 新規性の追求
新しい物事や出来事に対して関心を持ち、積極的に行動していく姿勢です。
変化を恐れず、常に新しい学びや経験を求め続けることで、視野が広がり、困難な状況への対応力も高まります。
2. 感情の調整(セルフコントロール)
ネガティブな感情、特に怒りなどをうまくコントロールできる力です。
自分の感情に振り回されず、目的のために思考、感情、行動などを変化させる「自制心」がここに含まれます。
不安を感じたらマインドフルネスで落ち着かせる、イライラしたらランニングで気分転換するなど、自分なりの調整方法を持つことが重要です。
3. 肯定的な未来志向
将来に対して楽観性を持ち、明確な目標などを持って肯定的に捉えることです。
未来をより良くできると信じ、そのために実際に行動できる力(現実的楽観性)は、自己効力感(自分はやれると思える根本的な自信)を土台として高まっていきます。
❸思考の柔軟性が回復を早める

では、具体的にどうすればレジリエンスを高められるのでしょうか。
最も根本的で、私たちマネージャー世代も日々意識しているのが、「思考の柔軟性」です。
皆さんもご存知かもしれませんが、出来事が直接、私たちの感情に結びつくわけではありません。間に「ものの見方」や「捉え方」が強く影響しています。
これを「ABC理論」(アルバート・エリス氏が提唱した論理療法の概念)で見てみましょう。
- A (Activating Event): 出来事
- B (Belief): 考え方、捉え方(信念)
- C (Consequence): 感情(結果)
例えば、「コップに半分水が入っている」というAに対し、ポジティブな人は「半分も入っている(多い)」とBで捉え、ネガティブな人は「半分しか入っていない(少ない)」とBで捉えます。同じAでもBが違えば、結果として生まれるC(感情・印象)は大きく変わるわけです。
何かが起こったとき、ネガティブな感情(C)が生まれてしまったら、「なぜその感情が生まれたのか?」「偏ったものの見方(B)をしていないか?」と、一度立ち止まって自分に問いかけてみてください。
このBの部分を、多角的、客観的に捉え直そうとする姿勢(認知の柔軟性)こそが、立ち直りを早くします。
ネガティブな側面だけでなく、コントロールできるもの、期待できるものに目を向ける習慣をつけることで、ストレスを乗り越える土台ができてきます。このABC理論の考え方は、以前にご紹介した「視点、視野、視座」の考え方と共通する部分があると思っています。併せて参考にしてみてください。
❹自己認識と人とのつながりを強化する
レジリエンスを高める具体的なスキルは多岐にわたりますが、今日からすぐに意識できる、特に若手・中堅のビジネスパーソンの皆さんに強化してほしい2つのポイントがあります。
1. 自己認識(セルフモニタリング)の徹底
レジリエンスが高い人は、自分が今どういう状態か、自分の感情や思考に注意を払える人です。
「最近疲れているな」「感情的になりやすいな」といった、自分の状態の変化に気づけると、その状態に合わせて適切な対処を施すことができます。
自分の状態を正確に見つめる力は、ストレス対策を行う上での重要な土台になります。
2. 良い人間関係の構築
最終的に困難な状況を乗り越えるためには、周囲からの協力やサポートが不可欠です。
レジリエンスの高い人は、他者と信頼関係を築き、その関係性を維持する能力に長けています。
もちろん「友達を100人作れ」という話ではありません。
日頃から部署内や社外で良好な関係を築けていれば、いざという時にアドバイスをくれたり、手を差し伸べてくれる人が現れます。
孤立せず、ストレスを共有する場所があることは、回復力を高める大きなプラス要因になります。
最後に

レジリエンスは、反復練習によって改善の余地がある、後天的なスキルです。
仕事で失敗しても、大きな困難に直面しても、それは成長のための学びです。
大事なのは、そこで折れて立ち止まってしまうことではなく、しなやかに、力強く立ち直ることです。
実は気持ちの切り替えが下手くそな自分
このようなレジリエンスの記事を書いて、皆さんへ偉そうにアドバイスをしていますが、私は気持ちの切り替えが下手くそです。仕事のミスを、帰宅後や休みの日にも思い出して、少し暗い気持ちになったりすることがあります。
だからこそ、「レジリエンス」の考え方を強く意識するようにしています。毎日レジリエンスの考え方を習慣的に意識することで、自分の中では少しずつ変化を感じています。
このレジリエンスの考え方は、以前にご紹介した「リフレーミング」の考え方とも相性が良いと感じていますので、併せて参考にしてみてください。
若手・中堅のビジネスパーソンの皆さんは、これからさらに大きな役割を担っていきます。もし今、ストレスを感じているなら、自分の思考の癖を観察し、柔軟性を持たせる練習を始めてみませんか!?
このページが、読んで頂いた方の参考になれば嬉しいです。
参考資料
このページで参考にさせて頂いた資料(URL)を、以下に記載しています。
- レジリエンスとは? 意味やビジネスで重要である理由、高める方法を解説
- 「レジリエンス」とは?意味や高めるメリット、ビジネスで注目される理由を解説
- レジリエンスとは?ビジネスでの意味や高める方法を解説 | NECソリューションイノベータ
以上
